「ラ ガリゴ(6)」(2025年06月09日) 喪が明ける40日目の日にパトトケが末娘への祈りを捧げているとき、かれの頭にアイデ アがひらめいた。神でない別のものの姿で地上へ送れば、この娘は生き返ることができる。 パプンナイエに姿かたちを変えさせて地上に送ろう。そうだ、この娘をサンギアンスッリ にするのがよい。 パプンナイエとは独在神を意味しており、ブギス人の古代信仰の中にデワタ セウワエと して登場する神だ。サンギアンスッリは稲を意味している。サンスクリット語のsangは敬 意を示す言葉、hyangは神、sriは光り輝くものやことを指す。イ_ア語ウィキペディアに よればDewi Sriはヒンドゥのラクシュミ女神を指している。このラクシュミ女神は中国に 入って吉祥天女になった。 さて、当時の天上界の住民たちはたいていサンギアンスッリというものがあることを知っ ていたものの、だれも実物を見たことがないし、ましてや食べたこともない。天上界の者 はみんなサゴを食べていたのだから。 パトトケ夫妻はト パランロエッや他の神々を集めてそのアイデアを諮った。そして、オ ッダンリウッの爪の飾り模様がさまざまな大型魚になり、長く美しい髪の毛がヤシの木に なることがわかった。ヤシの木にはおいしい実が成り、またトゥアッを作ることもできて、 飯を食べるときの添え物になるだろう。 ウィ オッダンリウッがサンギアンスッリに変身するためには、その身体を粉のように細 かくしなければならない。その仕事をパトトケは弟のビラッ・タッカジョ・ウェロ・シア ンレに命じた。最初ビラッはその命令に抗議した。定められた運命を変えるのはいけない ことでしょう。だがパトトケは弟を説得した。変えるのはオッダンリウッの姿であって運 命ではない。この娘の運命はすべての者に愛され、そして愛され続けることなのだ。だが ビラッの懸念は消えない。もしもオッダンリウッがサンギアンスッリになったあと、一部 の人しかそれを好まなかったらどうします? ビラッを納得させるためにト パランロエッがオッダンリウッの爪のひとつを魚にし、髪 の毛の一本をヤシの木に、そして着ている絹服の一片を黄・白・赤の麦と一連の粟と実の 熟したジュズダマ、さまざまな野菜、およびたくさんの小鳥に変えた。 それらの食材が料理され、天上界のひとびとに振舞われた。もちろんビラッも食べて頬を たるませた。こんな美味い物ははじめてだ、サンギアンスッリは本当に美味しい、とだれ もが賛辞を述べた。ト パランロエッはみんなに教えた。これはおかずなのだ。米と呼ば れるようになる食べ物はこれらよりもずっと美味しい。米は稲の実だ。 ビラッは最終的に納得して命じられた仕事を請け負った。オッダンリウッの身体を粉砕す るのは魂を死者の国に移動させることになる。その仕事を始めるに当たって、ビッスゥた ちがラウォロという儀式を行って聖なる歌を唄った。オッダンリウッの身体が雷の石の上 に横たえられると、ビラッは仕事を始めた。 細かい粉のようになったオッダンリウッの身体は甕に入れられ、しっかりと蓋が閉じられ た。70日後にその蓋が開くのでその間、昼夜を分かたずに監視が続けられた。そして期 待に満ちた70日目がやってきた。[ 続く ]