「デリのニャイ(18)」(2025年07月08日)

しかしこのチューケンという名の息子は太っていて顔が扁平、目は藪にらみで鼻が曲がっ
ている。これが父親に劣らず女好き。顔立ちが良く、色白で肌がツルツルしている女クー
リーを見つけると、もう見過ごしておくことができない。この息子は古い方のビニとでき
あがっている。監督人頭が二人目のビニを連れてきて自分を相手にしなくなったのだから、
最初のビニにとってはそういう関係ができあがるのも理にかなっている。

家屋の構造は寝室が五つ並んでいて、寝室同士の間に扉が設けられている。だから隣り合
う寝室の間では人間が部屋の外に出なくても行き来できる。一番表に近い部屋は客のため、
三番目の部屋はボッ・クウィホアが使い、その隣がチューケンの部屋で、チューケンと古
い方の義母クウィホアが夫婦もどきになっているのだ。一番奥の部屋は誰も使っていない。
監督人頭は息子と古いビニがそんな仲になっていることを百も承知だが、何をする気もな
い。なるようにさせておけばいいのだ。世の中の倫理とやらに引きずり回されて他人が好
きでしていることに介入し、厄介ごとなど引き受ける必要はないのである。その人間がそ
のために滅ぶのなら、滅べばよいではないか。


カスミンが監督人頭の家にやってきたとき、監督人頭はもう仕事に出ていた。下男がそう
説明しているというのに、カスミンはしつこく監督人頭に会わせろと要求するので、下男
はしかたなくチューケンを起こした。

そのときチューケンの部屋でクウィホアが一緒に寝ていたから、ドアを叩く音にふたりは
驚いて目を覚ました。監督人頭が来たのかと思って、小心者のクウィホアは洩らしたくら
いだ。いくらそれが公然の秘密であっても、白日の下に暴かれたら秘密でなくなる。秘密
でなくなると倫理上の悪事となって断罪される。だからみんなが知っていても秘密にし続
けなければならない。人間の世というのはなんという理屈で成り立っているのだろうか。

クウィホアは慌てて自分の部屋に逃げた。それを確かめてからチューケンがドアを開くと
そこに下男がいて、ムラユ人の客が来ていると言う。
「親父が帰宅してから来るように言え。」と言っても下男は
「いま会わせろと無理強いするんです。」と説明した。

「その客は何を望んでいるのか?」
「何も言わないから分かりません。」
しかたなくチューケンは表に行った。

客間にやせた中年のムラユ人がひとり座っている。やってきたチューケンを見て立ち上が
り、挨拶した。
「ごきげんよう、若頭家。」
「なんの用ですか。あんたはどちらから?」
「怒らんでください、若頭家。わたしゃ老頭家の友達で、話をするためにここに立ち寄り
ました。」

カスミンの人あしらいの技術に抵抗できる者は女にも男にもめったにいない。チューケン
もこの中年の男が好きになり、もてなそうとし始めた。
「まあ、座って。茶を飲みますか、それともアヘンかな?お好きなものを飲んで待ってい
れば、親父はそのうちに帰って来るでしょう。」
「そりゃありがたい。じゃあ、若頭家は老頭家の息子さん?」
「その通り。」
[ 続く ]