「デリのニャイ(19)」(2025年07月09日)

「監督人頭の息子とは、なんという幸運でしょうか。あれこれ欲しいものはなんでも手に
入るでしょう。日々の暮らしに何ひとつ不足がない。」
「何が幸運なものか。親父のように女をニ三人持てるのとはわけが違います。」
「若頭家が美しい女を持ちたいのであれば、そんなにむつかしいことではありません。」
「自分はたいした金を持っていないのだから、女を囲うことなんかできるわけがない。」
「知恵を働かせりゃ、金なんかいくらでも手に入ります。金なんかたいした障害にはなり
ませんよ、若頭家。」
「どうすりゃいい?」
「わたしが知恵を授けてもいいが、老頭家に知れたらわたしゃ大恥をかくことになる。秘
密が守れますか?」
「よし、わかった。その秘密が親父に知られることは絶対にないと約束する。」

カスミンはもう待ちきれなくなって縁台の座卓に載っているアヘンに手を伸ばし、
「いい知恵を出すにはこれに限る。」
と言いながら心ゆくまでアヘンを吸う。

アヘンを気持ちよく吸っていたカスミンはそれを一段落させてからチューケンに言った。
「金庫の鍵を握ってるのはだれですか?」
「二番目の義母だ。」
「その義母さんは若頭家を愛してますか?」
「全然。実の母子じゃないんだから。」
「若頭家はそれをしなきゃいけない。義母さんがあんたを好きになるようにする。」
「そりゃ無理だ。そんな難しいことができるわけがない。」
「無理じゃありませんぞ。やり方さえ解ればできる。」
「どうやって?」
「シアンタルにその道に長けたドゥクンがいます。そのドゥクンに頼んで義母の心を若頭
家に向けさせるんですよ。そうなりゃ、義母は老頭家よりも若頭家の方を愛するようにな
る。」
「ああ、そりゃあいい。あんたはそれを手伝ってくれますね。」
「老頭家にこれが知れらないようにしてくれれば、わたしゃ喜んで若頭家の手伝いをしま
すよ。今度の15日にシアンタルへ行きましょう。トゥビンの駅で落ち合えばいい。わた
しゃトアンのニャイになった姪を連れて買い物に行くので。」

「へえ、あんたの姪が管理人助手のニャイになった?その娘はきれい?それともたいした
ことない?」
「きれいでない娘をトアンがニャイにするわけないでしょう。」
「そのきれいな娘を見たいなあ。管理人助手の家へ行きましょう。」
「いやあ、老頭家に知れたらわたしゃ困る。」
「親父は昼まで戻りませんよ。ちょっとだけだから、ねっ、いいでしょう?」
「もしもわたしが老頭家と話をしているときに若頭家が来たら、わたしらは知り合いでな
いという顔をしてくださいよ。」
「ああ、大丈夫だ。」

カスミンはこの意外な成り行きに面食らったが、この二人目の金づるから臨機応変に搾り
取ろうと考え、チューケンを連れて管理人助手の家の脇にある入り口から邸内に入り、自
分の部屋に連れて行った。表から入ればだれかに見られるのが確実なのだから。[ 続く ]