「デリのニャイ(20)」(2025年07月10日)

カスミンはチューケンにドアの後ろに隠れて覗き見するように言い、ロスミナを呼んだ。
きちんと身繕いをしたロスミナが夫の呼ぶ声を聞いてやってきた。

「あにさん、なにか御用?」
「ああ、おまえに念を入れようと思って呼んだ。15日にはシアンタルへ買い物に行くか
らね。トアンには早めに耳に入れるようにしなさい。」
「はい、わかりました。」
ロスミナはそう言ってまた仕事に戻って行った。
ドアの後ろから出てきたチューケンは興奮気味だった。

「本当だ。こんなに素晴らしい女を見たことがない。」
「若頭家、誤解しちゃいけない。若頭家が見たいと言うから見せただけですよ。この姪の
身体を売る気でしたんじゃありません。わたしらが知り合いになったんだから、頼みを断
っちゃ悪いのでお連れしただけです。」
「ああ、確かにあんたのおっしゃる通りだ。俺はあんたの姪のようにきれいな女を持ちた
いと心底から思った。」
「デリにはあのくらいの女はまだほかにも少なくありません。バンドンから肌白の女がた
くさん流れてきていますから。しかし先立つものは金ですぞ。」
「うん、それをさっきから考えてるんだが、なかなか思い浮かばない。」
「若頭家にはもうひとり義母がいましたね。この義母は若頭家を真剣に愛しているでしょ
う?」
カスミンの当推量が図星を突いた。チューケンは顔色を変えて否定する。カスミンもその
公然の秘密を共有することになった。

「わたしに隠し立てをする必要なんぞありませんよ、若頭家。若いきれいな女を持つため
の資金の手始めはそこから手に入れることです。その金を使ってシアンタルのドゥクンの
術を手に入れ、もうひとりの義母を足元に額ずかせる。そうなれば、もう金に不自由する
ことはない。」
「古い義母に金を出させるにはどうすりゃあいい?」
「はっはっは、そりゃ簡単だ。百ルピアの借金があって返済期限が来たが、自分には金が
ない、と言えばいい。それでも金を出そうとしなければ怒りまくるふりをして、自分たち
の関係はもうこれまでだと女に思わせるようにすればいい。」

カスミンの入れ知恵を持ち帰ったチューケンはさっそくそれを実行し、そして簡単に百フ
ローリンを手に入れた。チューケンがお礼代わりのキスをすると、チューケンが自分への
愛をもっと深めたと思って、クウィホアがチューケンをかき口説いた。
「いつまでもこんな関係を続けるのはもういや。あたしゃおまえが大好きなんだ。はやく
ふたりで所帯を持って、世間から夫婦扱いしてもらいたい。」
「ああ、自分でも早く義母さんとそうなりたいと思ってる。金さえあれば、ふたりでペナ
ンへ行って夫婦の暮らしを始められるんだが。」
「本当に残念ね。金庫の鍵をあたしが握っていればすべてうまく行くのに、新しいビニの
手に移されたから。」
「俺はあっちの義母さんに取り入って、金庫の中身を融通してもらうことを考えてる。俺
の頼みを聞いてもらえるように。」
「そんなこと言って、ホアブウィに乗り換えるんじゃないでしょうね?あたしのことなん
か、忘れてしまうんじゃないの、ケン?」
「なんでそんなことを言うの。俺が義母さんをこんなに愛してるというのに、それを疑う
んだから。俺が欲しいのはあっちの義母さんじゃなくて金なんだよ。」
クウィホアがチューケンに抱きつく。[ 続く ]