「デリのニャイ(25)」(2025年07月15日)

ロスミナとふたりだけになったチューケンが話し始めた。
「ニャイ、怒っちゃいけないよ。あんたはデリのパフテルなんだな?」
「えっ、パフテルって何?ババ、あたしは意味が解らない。」
「パフテルというのは一手販売する独占販売人のことだ。誰にでも売るんだよ。」

ロスミナはチューケンの父親とのことを皮肉られたと覚り、とぼけようとした。
「もしあたしがパフテルだったら、こんな貧乏ったらしい姿をいまだにしているはずがな
いわ。」

ロスミナを喉から手が出るほど欲しいチューケンはこの女が自分を嫌いになるとまずいと
思い、話の流れをそらそうとした。
「いやなに、パフテルというのは誰にでも売るし、誰からでも仕入れるんだ。ニャイはシ
アンタルへ行って高価な宝飾品をたくさん買うんだろう。もうその金をトアンからもらっ
てるんだろうね。」
「ええ、あたしはまとめ買いしたいから、ババがそのお金を出してあげようと思うなら、
あたしはババに感謝感激。」
「ああ、まとめ買いはできないが、俺の気持ちの印をあんたが身に着けてくれるなら、ひ
とつふたつ何かを買ってあげてもいい。」
「ババ、もっと小さい声でしゃべって。人に聞かれたら恥ずかしいわ。」
「何の恥ずかしいことなんかあるものか。俺たちゃ同じひとつの部屋に泊まるんだ。」
「ええ?そんなことをあたしの伯父さんがトアンの耳に入れたら、とんでもないことにな
るわ。」
「そんなことはない。ニャイの伯父さんは俺の親友なんだ。俺があんたのオトコになるこ
とも承知してる。」
と言いながらチューケンはロスミナの腿をつねる。

「あっ、誰かに見られたらどうするの!」
「見ても何とも思わないよ。デリのニャイはこれが普通だということを世間はみんな知っ
ている。・・・・ねえニャイ、俺がどれほどあんたに思い焦がれているか、この気持ちを
あんたに受け止めてもらいたいんだよ。」
「ババはいくらお金を持ってるの?」
「金はいっぱいある。それをホテルであんたにあげるよ。」
「あたしがこの身体をあげたら、ババがあたしにお金をくれるっていうこと?」
「それを言うなら、俺はあんたにもう10ルピアあげてるじゃないか。」

ふたりの会話がはずんでいるときにカスミンが座席に戻って来た。
「おや、仲良く何を話してるんだね?」
「息子が恋焦がれている女を息子の父親が先にモノにしたっていう話だ。」
とチューケンがカスミンに答えたから、ロスミナはその皮肉に顔を赤くした。カスミンは
笑って、チューケンに意見した。
「だったら父親だけを愚か者と言うこともできない。息子だって愚かだ。金で買えるんだ
から。」
[ 続く ]