「デリのニャイ(26)」(2025年07月16日) 鐘が三回鳴って列車が動き出した。トゥビンティンギ駅ではかなりすいていたのに、駅に 停まるごとに乗客が増えて、シアンタルに着くころには車内が満員になっていた。三人は 駅の近くの中華ホテルに部屋を取った。 まず食事をしようとチューケンが言い出し、ホテルのボーイを呼んであれこれ豪勢なメニ ューを言い、金を渡して買いに走らせた。食堂に食事の用意ができたことをボーイが知ら せに来たので、三人は部屋を出て食堂へ。 食事が終わると、チューケンがカスミンを追い払うためにドゥクンを探しに行くように言 う。チューケンの意図がカスミンにはお見通しだが、そういう筋書きだから仕方がない。 しかし、ただでそんな機会をチューケンに与えるカスミンでもない。 「じゃあ、わしひとりで行ってくるが、サドの代金をくれ。」 「この10ルピアで用を全部終わらせてくれ。失敗はなしだぜ。」 10ルピアを手に入れたカスミンはアヘン館へ直行した。 チューケンはやっとロスミナとふたりきりになった。 「ニャイ、もうおなか一杯かな?」 「一杯よ、ババ。」 「じゃあ、部屋に入って横になろう。長時間汽車に乗って疲れただろう。」 「あたしはここにいるから、ババだけ部屋で休んで。あたしを待たなくていいから。」 「ひとりで部屋に居たってなにも面白くない。ふたりで話をしよう。それにニャイがこん なところにひとりでいるのをトアンの友人にでも見られたなら、とんだ災難が起こる。」 「あたしがひとりで食堂に居たら何が起こるの?」 「そうやって金稼ぎするデリのニャイがいるんだよ。そんなことより、俺がこんなにニャ イのことを思っているというのに、ニャイは本気に聞こうとしない。」 「ババは一二回あたしを抱いたらそれで終わりでしょう?そんなんじゃムダだわ。この身 体を汚しているだけ。ずっといつまでもあたしを養ってくれなきゃ。」 「俺の心が見えてないからニャイはそんなことを言うんだ。俺の気持ちはそうしたいんだ。 ただどうやってやるかがまだ分からない。」 「ババはそこまであたしのことを思ってるの?」 ロスミナの気持ちが動いたのを感じたチューケンはロスミナの手を引いて立ち上がらせ、 部屋に連れて行こうとする。 「ああ、あたし怖いわ。こんなことって初めてなんだから。」 部屋に入ってドアを閉めたチューケンが尋ねる。 「ニャイはトアンから休みを何日もらったの?」 「今日だけよ。今日中に戻らなきゃいけない。だからここに長居はできないの。ババはな んでドアを閉めたの?」 「ああ、ニャイは冷たい。俺のこの燃え盛っている恋心を一緒に分かち合う時間はそんな に短いのか。俺はひとりで干からびるだけだ。 さあ、ニャイ。なんでそんなに離れて座ってるんだ。もっとこっちにおいでよ。男が怖い 生娘みたいな真似をしなくていいから。」 チューケンがイスに座っているロスミナの手を引っ張ってベッドに座らせようとしたから、 手荒にしないで、とロスミナが抗議した。上衣が崩れて台無しになるからやめて、と言っ て自分で上衣を脱いだ。そして下着姿でベッドの縁に座った。[ 続く ]