「デリのニャイ(27)」(2025年07月17日) アヘン館でアヘンを楽しんでいたカスミンはガバと跳ね起きた。自分の失敗に気付いたの だ。チューケンにロスミナを飽きるほど抱かせたら、壮大な計画がご破算になってしまう ではないか。ロスミナを目の前に吊られたニンジンにしておかなければ、チューケンをそ の方向に走らせることができなくなる。 カスミンはシアンタルに住んでいる仲間を探してニセドゥクンに扮する仕事を頼み、必要 な演技とセリフを教えた上で駅前のホテルに取って返した。 室内で睦んでいたふたりは驚いた。チューケンの腹の底からふつふつと怒りが湧いた。チ ューケンはまだ本懐を遂げていなかったのだ。驚いたふたりはすぐに服を着、髪に櫛を入 れてからドアを開いた。ふたりの上気した顔色は隠しようもなかったが、カスミンは相手 にしなかった。 「なんでこんなに早く戻って来たんだ。」 と怒るチューケンに、ドゥクンが見つかったから早く会いに行こうとカスミンが言う。 「明日にできないか?今日は身体の調子がよくない。」 「明日は会えない。地位のあるお方の息子に呼ばれているので、ドゥクンは明日メダンへ 行かなきゃならない。金さえ手に入れば、毎晩だってロスミナと一緒にいられるじゃない か。」 男二人はニセドゥクンのところに出かけ、ロスミナはホテルの部屋でふたりの帰りを待つ。 およそ2時間してふたりが戻って来た。チューケンはニセモノとも知らないドゥクンに2 0フローリンを払った。その半分がカスミンの手に入る。 三人は買い物に出かけた。ロスミナはパサルの一角にある貴金属店に入り、黄金製の腕輪 ・ピン・指輪・かんざし・耳飾り、そして金時計を買った。総額で5百フローリンを超え る。ロスミナの手持ちは4百フローリンだったから足りない。足りない金額はチューケン に払わせた。 チューケンは疲れたと言ってホテルに帰ろうとする。ロスミナはまだ絹の傘を買ってない から、買ってくれとチューケンに言う。デリのニャイはみんな持っているのに、あたしだ けそれを持っていなかったら恥ずかしい、と買い物意欲旺盛なロスミナがチューケンに迫 る。チューケンはそれも払わせられた。 ホテルに戻ろうとしつこく求めるチューケンを引き回すネタも切れたから、三人はホテル に戻った。カスミンはさっきのアヘン館が中途半端だったから?み足りないので、アヘン 館へ行こうとチューケンを誘った。チューケンをロスミナ日照りに置いておかなければな らない。 ところがチューケンは拒否した。ロスミナを抱きたいのだから当然だ。1リンギッコイン をカスミンに渡して、これでゆっくり呑んで来なと言う。1リンギッは2.5フローリン の価値を持っている。カスミンも生理的欲求に勝てず、チューケンに堪能する機会を与え てしまった。カスミンはアヘン館に朝まで居続けた。 翌朝ホテルに戻ったカスミンが部屋に入ると、ふたりは抱き合って気持ちよさそうに寝て いた。チューケンの顔に隈ができていたから、どうも夜を徹して思いを遂げていたようだ。 カスミンはチューケンの操り方にもう一工夫しなければいけないと思った。 三人は朝食を済ませてから駅へ行って列車に乗り、トゥビンティンギの農園に戻った。農 園の日常がまた再開された。[ 続く ]