「トランスミグラシ(終)」(2025年07月29日) 1970年代に西ジャワ州から百数十世帯がトランスミグラシプログラムで中部スラウェ シ州に移住した。このグループの移住先はドンガラ県の西海岸部が指定されていた。入植 してから約束通りの広さの土地を与えられたものの、地質が西ジャワのものとまったく異 なっていたため、移住者が持っている耕作の知識と経験はあまり役に立たなかった。 毎年の収穫は自分たちの食糧をまかなうだけでも不足気味であり、移住先の農業振興にい たってはまったく無理な話になる。移住者はもっと良い土地を探し始めた。そして県中央 高原部のタワエリ郡にある閉鎖されたコーヒー農園を見つけ、数年後におよそ百世帯がそ ちらへ移住した。タワエリ郡Bulu Kebon Kopiというのがその土地の地名であり、パル=パ リギ街道沿いに位置している。パルの町から50キロほど離れているので、街道を2時間 足らず走ればたどり着ける距離だ。街道のその一帯は山の中腹に作られた道路であり、山 側は見上げるような斜面が高くそびえ、石や泥が上から落ちて来る。反対側は2百メート ルくらい深い谷になっていて、自動車の運転者は通るたびに神経をすり減らしている。 その道路沿いに野菜や果実の売場が20軒ほどびっしりと並び、おまけに食事や飲み物を 街道通過者に供するワルンも何軒かオープンしている。その野菜果実販売センターは街道 を通るひとびとの立ち寄りスポットになっているのだ。道の駅といったところだろうか。 そんな場所が他にあまりないために街道を走る乗合バスや自家用車の多くはそこを休憩や 食事に利用している。ところが中には、そこを目指して走って来る車もあるのだ。そうな ってくれば、そこはショッピング観光スポットでもあると言えるだろう。 産品の販売価格はだいたいパルにある伝統市場の価格と似たようなレベルになっている。 だがクブンコピの街道沿い販売センターのものは摘みたてという新鮮さの点で群を抜いて いる。 涼しい高原の気候と野菜果実栽培に適した土壌とあって、スンダ農民はニンジン・トマト ・白菜・唐辛子・キャベツ・ジャガイモなどの野菜とサラッ・みかん・ランブタンなどの 果実をクブンコピで栽培してきた。野菜はカリマンタンのタラカンにも送られていたそう だ。 しかしその後、野菜の栽培は高原斜面の土に良くない影響が出るという話が持ち上がり、 地元行政はクブンコピの移住者の一部をナプ渓谷やクワリに振り向けた。クブンコピでは ニンジンと白菜がメインの作物になり、トマト・キャベツ・ジャガイモなどは再移住先で 栽培されている。 クブンコピ産の野菜と果実の知名度が高まったために再移住したグループの収穫もクブン コピに集められているのだが、運送効率と費用が商品の在庫管理を困難にするとともにコ ストを押し上げていて、その打開策が求められている。そうではあっても、クブンコピが 獲得した野菜果実販売センターの地位はドンガラ県内ですでに揺るぎのないものになって いるのだ。[ 完 ]