「デリのニャイ(41)」(2025年07月31日)

トアンの顔色が蒼白になった。
「それは本当なのか、ミン?」
「あいつはね、女衒なのよ。トアンのニャイを、金を払う他の男に売るのよ。」

トアンはまだ半信半疑だった。酔っぱらいの言うことが本当かどうかは確信が持てない。
しかしミンは眠ってしまった。2時間経ち、ミンが目をさました。しかし酔いが完全に醒
めたわけでもない。トアンが自分の傍にいて酔いが醒めるのを待っているのに気付いたミ
ンが驚いたように
「トアン!」
と言って抱き着き、頬にキスした。そして尋ねた。

「あたしはさっき何を言ったの?」
「ロスミナには男が何人もいる。そしてカスミンは伯父じゃなくてロスミナの男だと。」
「あたし、そんなこと知らないわ。知らないことを言うわけないわ。」
「ミン、わたしを怒らせないでくれ。わたしは本当のことを知りたい。あんたをこの問題
に巻き込むようなことは絶対にしないから。」
「あたし、怖い。カスミンは悪党よ。あたしはあいつに殺される。」
「わたしがミンを守ってやる。しかし、その前にわたしがカスミンを殺すだろう。」

トアンのその言葉に決意がこもっているのを感じて、ミンは鳥肌が立った。このひとは本
当にそれをやる気なんだ。ミンは考えた。このひとには正直に教えたほうがよい。このひ
とは自分の人生をそれに賭けようとしているのだから。

「あんたは正直に打ち明けてくれた。本当に素敵な娘だ。」
トアンはミンを抱いて口づけした。時計が二時の鐘を打った。トアンは部屋を出ると、仮
眠しているジャワ人クーリーを起こして農園への帰途に就いた。

トアンはクーリーに言った。
「あんたに手伝ってもらいたいことがある。わたしは敵を倒さなければならない。本心か
らわたしを手伝ってくれるなら、大きなお礼をあんたにあげよう。」
「トアンの頼みをわしが断るはずがないでしょう。わしも死に物狂いでトアンの敵に向か
いますよ。」
「ありがとう。じゃあちょっと待ってくれ。今お礼を渡しておこう。ちょっと火をつけて
くれないか。」

トアンはチェックを取り出し、そこに500フローリンという金額を記入した。
「これを銀行に持って行けば金がもらえる。」
大金がもらえるとわかって、クーリーは大喜びで勇み立った。

ふたりは農園に戻るとトアンの家の表に立った。トアンはクーリーに指示した。
「わたしは表から入って、敵を殺しに行く。あんたはわたしの部屋の窓の下の辺りにいて、
もし敵が逃げ出してくればその鉈で一太刀浴びせてくれ。」
「分かりました、トアン。叩っ切ってやりますよ。」

ジャワ人クーリーは庭にまわる。トアンは玄関扉を開いて家の中に入った。自分の寝室の
ドアを開こうとしたが、中から掛け金が降ろされていて扉が開かない。部屋の中に人間が
ふたりいることがかすかに聞こえる寝息からわかった。トアンはドアを叩いた。[ 続く ]