「デリのニャイ(45)」(2025年08月04日) 貧困の出稼ぎ青年三人にステディのガールフレンドなどいない。金がある家は娘が年ごろ になると家の奥に隠して外に出さなくしてしまうから、男女交際は起こり得ない。街中に いる女はたいてい結婚歴があり、だれかの妻として街にいるか、あるいはそれの過去形と して街にいるかのどちらかだ。しかも、女がいくらまっとうな仕事をして生きて行こうと しても女に与えられる仕事は報酬の小さいものばかりであり、それで自分の生活を賄うの は不可能なのである。女は男にたかって生きていくように社会の仕組みが作られており、 ロスミナの信念にも見られる通り、娼婦になるか妾になるかというのがたいていの女の選 択肢になっていた。つまり三人が誘える女の子というのは娼婦だったのだ。 今夜女の子を三人誘って家へ連れて帰り、明朝タクシーを雇ってチュルミン海岸へ海水浴 に行こうというのがテッの考えたパッと遊ぶことの中身だった。ただしヨンにはお気に入 りの歌舞娘がいて、そのシナムという名の娘ひとりをいつも相手にしているから、今回も 他の女はいらないと言う。ただし他の男に買われる前に早くシナムのところに行かないと いけないと言って躍起になっている。 三人はまずホテル コアンチョンリーの金魚鉢を見に行ったが、女はひとりしかおらず、 しかも魅力的でないのでやめた。三人はロイヤルビオスコープ地区に向かい、いくつかあ るニッポンホテルのひとつに入った。ヒンがテッにそこの金魚鉢にいるひとりを勧めた。 「シティがいいんじゃない?」 「いやあ、あの子は気まぐれだからな。」 その言葉を聞きつけてシティがテッに文句を言った。 「あたしが何だって?ババ、あたしがもしキチガイだったらババの首をしめちゃうよ。」 「キチガイなんて言ってない。半キチって言っただけだ。」 「何が違うの。今あたしの気がクサってないからいいようなものを、あたしを怒らせたら どうなるか、見てらっしゃい。あたしへのお金は?サドに乗るお金もないのよ。お金をち ょうだい?」 「この娘はサドに乗って町中走り回り、自分を売り歩くんだぜ。給料日には待ってりゃ売 れるんだから、そんなことをしなくてもいいって言うのに。」 どうやらこのふたりはお馴染みさんのようだ。ヒンが知らなかっただけだろう。 「ええ、どうせあたしはおバカさんよ。ババはなんでここへおバカさんを探しに来たの?」 と言ってテッの身体を叩いたから、ヒンが心配した。 「まあまあ、こんなところで喧嘩してるのがエンマに知れたら叱られるよ。」 「そんなことはないわ。あたしはここでは自由の身なの。借金はないのよ。」 「じゃあ、シティ、今夜家に泊まって明朝チュルミン海岸へタクシーで行こう。」 「本当にあたしを海水浴に連れて行ってくれるの?明朝になったら、行くのをやめる、な んて言って1ルピアコインだけ渡して帰らせるんじゃないでしょうね?あたしもブタウィ 生まれなんだから、同郷の者に異郷でひどいことをしないでよ。」 まあ、これを見てから言え、と言いながらテッが持ち金をちらりとシティに見せた。明日 一日遊ぶ資金としては十分だ。シティはすぐにテッを信じた。 四人は次に中華ホテルに入った。金魚鉢はないが、娼婦はたくさん周りに住んでいるから 呼んでくるとボーイが言う。 「アキアウ、シミナ、アムイ・・・誰がいいかね?」 「ああ、アムイがいい。テッ、このアムイって子はね、男をひとり破滅させたんだそうだ。 どんな子か一度見てみたい。」 「じゃあ、早くアムイを呼んで来させろ。」 [ 続く ]