「デリのニャイ(46)」(2025年08月05日) やってきたアムイは最初、恐る恐るという雰囲気で三人の青年に接した。ヒンが明朝チュ ルミン海岸へ遊びに行く計画を話すと、アムイは大喜びした。こんな生き方をしている娘 たちは、遠出をすることがほとんどない。男が交通費を負担して連れて行ってくれないか ぎり、同じ県内にある行楽地にすら行く機会がないのだ。 アムイは自分が悪女という噂の的になっているために、自分を呼んだ男に警戒心を抱くよ うになった。そのためにアムイがやってきた時に示した恐る恐るという雰囲気にヒンもテ ッも戸惑ったのである。 自分をニャイにした男が金にでたらめな人間であり、自分にくれた大金が横領金だという ことを少しも知らなかった、とアムイは自分の悲運を物語った。その男が頭家の金を5千 フローリンもちょろまかしたことが明るみに出て警察に逮捕されたとき、自分も1週間監 獄暮らしをしたのだそうだ。 世間にはアムイがその男をそそのかしたような風評が立ち、悪女という噂が広まったため にアムイは気持ちを腐らせていたのだ。ヒンはアムイが正直に事実を語っていると感じて、 本人の口からその話が聞けてよかったと思った。ともかくヒンはアムイを気に入った。 ということで一行は五人になり、ヨンのお待ちかねのシナムの家に向かった。シナムはロ ンゲンと呼ばれる歌舞娘で、唄い踊って芸を演じて謝礼をもらうが、もちろん芸を見てシ ナムを気に入った男と同衾もする。 五人はホスピタールヴェフにあるシナムの借家にやってきた。運よく、シナムはまだ家に いた。やってきたヨンにシナムはあふれるような愛想を見せて言った。 「あらあ、ババ。長いこと会わなかったからブタウィに帰ったんじゃないかと思ってた。 あたしもババに会いにブタウィへ行こうかなって考えてたところ。こんなに大勢であたし のところに来たのは、これからどこかへ出かけるつもり?」 「そうだよ。明朝チュルミン海岸へみんなで行こうって計画だ。そのために友達ふたりは さっき女の子を誘って来たけど、俺はお前が大好きだから、お前と一緒に行こうと思って 別の女の子を誘わなかった。どう、行くかい?行くなら早く化粧して着替えして出ておい でよ。」 シナムも大喜びで手早く用意し、外へ出た。そしてサドを呼び、みんなで青年たちの借家 に向かった。 女の子三人もすぐに仲良くなって大はしゃぎ。男所帯の三人の借家に突然大輪の花が咲き 乱れ、ほとんど絶え間なく女の笑い声が響いた。 シティが突然思い出したように言った。 「ねえ、運さえよければ、あたしらみたいな商売をしてても、いい暮らしに戻れるのよ。 前にホテルシンガポールの金魚鉢にいたミナのこと知ってる?黄金の飾り物なんか何ひと つ持ってなくて、食事ひとつするにもあたしらに金を借りまくっていたというのに、農園 のトアンに養われてトアンから金をもらうだけじゃなく、他の金持ちの男からも金をもら って、今じゃ金の苦労など何もなし。そうなったらもうあたしらには目もくれない。まる っきり知らんぷりよ。何よ、あの高慢さ。もう他の金持ちのニャイとしか挨拶もしない。」 「ああ、あたしもその話は聞いたわ。あたしたち同業の女の子の間じゃ評判がガタ落ち。 どんなに金持ちになったところで、長い人生で何が起きるかわからないんだから、あんな 振舞いをしてちゃきっと痛い目に会うわよ。」 とシナムも同調する。テッもその話に引き込まれて尋ねた。 「トゥビンの農園トアンのニャイか。宝飾品をどのくらい手に入れたのかな?」 「だいたい1千ルピアくらいね。」 とシティが答える。 「なんだ、それっぽっちか。数万ルピアくらいあるのかと思った。」 「いや、他にも現金を持ってるっていう噂よ。銀行に1万ルピアくらい預けてるって話を 聞いてるわ。」 シナムの方が情報源が広いようだ。[ 続く ]