「イブ(8)」(2025年09月16日)

スカルノ大統領を国家反逆の罪に陥れるのは困難だったが、オルラという時代を支えてい
た構造はほとんどすべてが切り崩された。グルワニは倫理性の欠如した邪悪な母たちの集
まりであり、ルバンブアヤの井戸に投げ込まれた将軍たちの殺害に加担したというストー
リーが捏造されて男女同権闘争を推進していた全国組織は壊滅したのである。

スハルトは女性国民を男の支配下に置くことが行政の隙間隙間に出現する問題の芽を摘む
ことになると考えたのかもしれない。少なくとも、柔和で優しく、従順で言いつけを良く
守り、礼儀正しく、慈愛に満ち、誠実であるという、男性にとっての理想の女性像作りが
オルバ政権のイデオロギーと化したのだ。

オルバ政権がスカルノの全否定という性格を持っていたことが、女性国民に対するそのイ
デオロギーを生んだという見方も可能かもしれない。女性国民のあり方を国家が規定し、
それを国家方針大綱に盛り込んだことは、それをいかに大きな問題とスハルトが見ていた
かということを明白に示すものだろう。生粋のジャワ人であるスハルトの女性観がその信
念に凝集されたことは間違いないと言えるのではあるまいか。


オルバ期が幕を閉じてレフォルマシ時代が到来したあと十年ほどが経過してから、オルバ
時代を築いて維持するのに関わっていたエリートたちが社会復帰を果たしてオルバ期の常
識を復活させる振舞いを示すようになり、何のためのレフォルマシかと多数の国民を嘆か
せることが起こった。そのひとつに、スシロ・バンバン・ユドヨノ(SBY)第6代大統
領が2011年8月12日に自分の妻であるクリスティアニ・ヘラワティ・ユドヨノに国
家勲章を与える出来事があった。

ジャワ人であるSBYはオルバ政権末期に軍歴の頂点目指して軍務に励んでいたのであり、
政治の分野に関わっていたわけではないから、オルバの残滓というカテゴリーに区分する
のは妥当でないだろう。

軍人上がりで清廉潔癖且つ厳格な人格者と見られていたSBYもそんなていたらくを見せ
た。そのこと自体と本論とは関係がない。本論が取り上げなければならないのは、国家勲
章を受けた大統領夫人がその国事行為に関連して語ったコメントである。
「大統領がより良く仕事できるようにわたしが務めることはわたしの努力が国家国民のた
めになるということでしょう。」

それは明らかにオルバが作り上げたイブのコンセプトに拠ったものだ。女性は男性に従属
するものであり、男性を世話しお仕えして従順な妻になるという女性の資質と出産機能に
重点を置いて構築されたオルバの女性イデオロギーを見ればわかる。[ 続く ]