「住民証明書(前)」(2025年09月19日) すべてのインドネシア国民は17歳からKartu Tanda Pendudukを持つように義務付けられ ている。そのインドネシア語名称は直訳すれば住民証明書になると思われるが、かつては それがインドネシア国民であることを証明する書類にもなっていた。つまり外国人居住者 には与えられないものだったのである。そのためにKTPの機能の中にはインドネシア国内 で国籍を証明する書類という意味が含まれることになった。ということは、KTPを持って いればインドネシア国民として法律行為が行えるという解釈も可能だろう。 日本には昔からそのようなものは存在しなかった。これは明治時代にお手本にした西洋諸 国がそんなシステムを行っていなかったから始まらなかったのではあるまいか。その後2 0世紀の前半にフランス、ドイツ、オランダなどが開始したものの、きっと日本人は米英 と同様にそんな必要性を感じなかったということだろう。 今ではマイナンバーカードというものができて米英グループから離れたようだが、携帯義 務はないのでヨーロッパ大陸グループにも入っていない。インドネシアのKTPシステムの ようなものは中国・インド・パキスタン・ナイジェリアなどの人口大国はどこも行ってい るそうだから、地球上の人類の大半が国家というものにがんじがらめに縛られる形がます ます進展しているように思われる。 インドネシアのKTP制度は、独立後に国民の身分証明書としてインドネシア共和国の地方 行政府がKartu Pendudukを発行したことに始まる。イ_ア語ウィキペディアの解説には Surat Tanda Kewarganegaraan Indonesiaを発行したとも書かれているのだが、後者の名 称で検索するとSBKRIが提示されてきて、この部分の内容が判然としない。 現在のKTP制度はオルバ政府が1977年にそれ以前の制度を改定したものだ。国が国民 に発行する書類という原理なのだから、国籍云々が書類の中に述べられていなくてもそれ を持っていれば確かに国籍を証明する書類だということになるだろう。2010年前後ご ろまで、その原理は継続していた。 しばらく前に偽造KTPを持っているヨーロッパ人が数人逮捕されたというニュースがイン ドネシア国内で報道された。インドネシア国民を証明する書類だと詐欺師に言われて、か れらは数千万ルピアを払って作らせたと警察の取り調べで語ったそうだ。 十数年前なら詐欺師の説明は妥当なものだっただろうが、今では政府が一元的な国民の個 人データ管理を行っていて、おかげで外国人居住者もKTPをもらうことになった。KTPを持 っていること自体がインドネシア国籍の証明にならなくなったのである。もちろんインド ネシア政府は非居住者にKTPを発行するようなことをしないから、外国人は在留許可をも らって居住者にならなければもらえない。 オランダ時代にも、15歳以上の男性植民地居住民は住民であることを証明する書類を持 ち歩くことが義務付けられていた。インランダーと呼ばれていたプリブミは自分の居所を 所轄するオランダ人監視官の事務所へ行ってverklaring van ingezetenschapという名の 住民証明書を1.5フルデンの費用を払って発行してもらった。15x10センチの紙の カードに名前や住所などの本人データが書かれているものだ。宗教の記載はなかったそう だ。別の記事には、証明書の費用は25センだったと書かれている。 インランダーに区分されない中華系やアラブ系の東洋人在留者はそれ以外にも入国許可証 toelatingskaartと在留許可証vergunning tot vestigingを持たなければならなかった。 在留許可証を華人はオンジーと呼んでいたそうだ。[ 続く ]