「インドネシア鉄道史(18)」(2025年10月28日)

タシッマラヤ県とチアミス県の境をチタンドゥイ川の支流が流れており、タシッマラヤ側
のマノンジャヤ駅とチアミス駅の間にその川をまたぐチラホン鉄橋がある。1893年に
建設されたチラホン鉄橋は全長220メートルで川面からの高さが66メートル。ところ
が、この鉄橋は上が鉄道線路、下が道路通行者用という、当時としてはたいへんに先進的
な形態で建設された。現在も使われているそのチラホン鉄橋は最初に建てられたままの形
態が維持されている。

蒸気機関車からCC200系ディーゼル機関車への変更が起こったので1954年に橋の基部
の補強工事が行われたが、上層部分は昔のままだ。とは言っても、道路通行者用の下段は
左右の枠に木の板を渡してあるだけのものなので経年劣化が起きることから、過去百数十
年の間にその木の板は何度も取り換えが行われた。今でも国鉄がその保全を行っていて、
2〜3年で取り換えているそうだ。2021年に行われた保全工事のあと、三輪以上の自
動車通行が禁止された。

鉄骨で囲まれている下段の路上通行者用は幅2メートル高さ5メートル。それまではその
橋を四輪車も通行していたのだ。もちろんトラックや乗合バスはダメ。すれ違いは不可能
だから、車両の流れを見ながら橋の両端にいる者が通行の開閉を行うことになる。その仕
事を地元民が自主的に行い、通行する運転者からチップを徴収した。交通秩序が保たれ、
しかも地元民には収入の道が開かれたのである。行政はそれに関わらない。毎日24時間
に5回のシフトで仕事をこなす地元民は50人くらいにのぼったそうだ。しかし2021
年に行われた保全工事のあと、かれらは収入の源泉を失うことになった。

この二層構造の鉄橋は珍しいために観光スポットになっている。時にはオランダ人まで見
学にやってくる。あんな古い時代にこれほど先進的な仕事をした先祖の業績を自分の目で
確かめにやってくるのである。しかもその偉業がどのようにして実現されたのか、オラン
ダでもいまだに解明しきれないでいる、と見学者たちは物語っているそうだ。[ 続く ]