「ジャカルタの電車(2)」(2026年01月04日) 上述のように蒸気機関車による鉄道商業運行の事始めは民間資本のオランダ東インド鉄道 会社Nederlandsch-Indische Spoorweg Maatschappij(略称NISあるいはNISM)がスマラン〜 タングン間で1867年8月10日に開始したものだ。その路線は1870年2月18日 にソロ、1872年6月10日にヨグヤカルタまで延長された。 またNISはパサルイカン〜バタヴィア〜コニングスプレイン間の鉄道敷設工事を1869 年10月15日に開始して1871年9月15日に汽車の運行を始め、1873年1月3 1日にはその路線をバイテンゾルフまで延長させた。NITMの路面鉄道が馬から蒸気機関車 に転換された時期に出遅れ感を抱いたバタヴィア市民もいたのではないかと推測される。 NISのバタヴィア〜バイテンゾルフ線開設は次のようなスケジュールで行われた。 1871年9月15日 Kleine Boom - Batavia Hoofdstation - Jacatra - Mangga Besar - Sawah Besar - Noordwijk - Weltevreden 1872年6月16日 Weltevreden - Kebon Sirih - Gondangdia - Dierentuin - Tjikini - Pegangsaan - Manggarai - Meester Cornelis 1873年1月31日 Meester Cornelis - Tebet - Tjawang - Doeren Kalibata - Pasar Minggoe - Tandjoeng Barat - Lenteng Agoeng - Pondok Tjina - Depok - Pondok Terong - Pabuaran - Bodjonggede - Tjileboet - Kebonpedes - Buitenzorg バタヴィア市内での蒸気トラムの運行は午前6時から夜7時までで、先頭が石炭を焚いて 走る機関車、そして一等から三等まで等級に分けられた客車が後ろにつなげられた。一等 車はヨーロッパ人と印欧混血者、二等車はアラブ人・華人・プリブミ貴族、三等車はプリ ブミ平民が対象乗客とされ、料金がそれぞれ異なっていた。しかしそこでの人種差別は厳 格でなく、プリブミが一等車料金を払って一等車に乗りこめば、それをつまみ出そうとす る係員も乗客もいなかったらしい。 ところが奇妙なことに、アラブ人や華人が三等車に乗ることは厳禁された。その理由は人 種差別と言うよりも、プリブミと東洋人在留者を引き離す政治的な目的のためだったそう だ。東洋人在留者に課された居留地制度・通行証制度と軌を一にするものだったと考えら れている。 蒸気トラムの先頭車両で火を焚きながら運転しているのはプリブミ機関士で、一等車には 西洋人の退職公務員が車掌頭として乗務し、二等車・三等車には制服を着たプリブミ青年 車掌が裸足で乗務していた。 NITM社が蒸気トラムの運行で繁栄を謳歌しているとき、競争相手が出現した。新設のバタ ヴィア電気トラムヴェフ会社Bataviasche Electrische Tramweg Maatschappij(略称BETM) がチキニの動物園とハルモニを結んで1899年に路面電車の運行を開始したのである。 バタヴィアでの電車運行のスタートがそれだった。 1899年4月10日 Harmonie - Pasar Tanah Abang - Kampong Lima - Tamarindelaan - Gang Djaksa - Kampong Baroe - Menteng - Dierentuin その後BETMはチキニ動物園からJl Kali Pasirのチリウン川を渡る橋を通って川の東岸へ 出て、クラマッで蒸気トラムの線路と交差し、北上してパサルスネンの北まで運行する路 線を開いた。こうして旧バタヴィア城市からグロドッ〜ハルモニ〜ヴェルテフレーデン〜 スネン〜メステルコルネリスというバタヴィアの有力ルートを通る蒸気トラムと、ハルモ ニからコニングスプレインの外側を回ってチキニ、そしてクラマッ〜スネンという新バタ ヴィアの外周を巡る電気トラムの二本立てという時代が始まったのである。電気トラムが スネンからバタヴィア駅まで延長されるとバタヴィア駅、ハルモニ、クラマッで蒸気トラ ムと接続したので、乗客はその三カ所で乗り換えることができるようになった 1900年7月1日 Dierentuin - Kramat - Pasar Senen - Sipajersweg - Pintoe Besi - Goenoeng Saharie - Jacatraweg - Voorrij Zuid - Station Batavia [ 続く ]