「ジャカルタの電車(16)」(2026年01月18日) KRL-Iと銘打たれた純国産の電車を鉄道車両産業国有事業体のPT Inkaが作った。1999 年6月に作られたインカ製電車は4両編成で2セット用意され、その1セットが2001 年9月に試運転に供された。試運転はジャカルタコタ駅からブカシ駅まで80トンの砂を 積んで夜中に行われ、時速120KMが記録されたほか、マンガライ〜コタ区間の高架線路 に上るパワーも十分な力を発揮した。 その時期、インカ社は国鉄がオーダーした48両のディーゼル列車の生産に当たっていて、 KRL-Iはインカ社側の発案で作ったものだった。言うまでもなく、国もしくは国鉄が買い 上げることを期待しての製造だった。しかし国鉄側に資金の余裕はまったくなかった。純 国産車両を使って車両製造の技術を高めることに寄与するのが国鉄に与えられている使命 であることはもちろんだが、首都圏電車路線の経営は大赤字になっていた。2000年の 運行総経費は1千4百億ルピアで、営業収入はその半分をカバーするのがやっとの状態だ ったのだ。 1セット5百億ルピアの列車を購入しても、それが年間に稼ぐ金額は12億ルピアしかな い。日本製の中古電車を購入するほうがはるかに安上がりであり、そのビジネス計算をだ れが行おうが、出て来る結論はひとつしかあるまい。 それから四半世紀が経過した今では、インカ製の新造電車10両編成16セットを購入す るのに4兆ルピアが必要と言われている。日本で現役を退いた中古電車10セットは1千 5百億ルピアで手に入るのだ。コミュータジャボデタベッ社が日本製中古電車を長期にわ たって使用していた背景はそんなところにあったようだが、それではインカ社の電車製造 技術が発展しないのも当然だろう。 結局、コミュータジャボデタベッ社が持ったその体質にも終わりがやってくることになっ た。赤字会社だから赤字を減らす努力をするのは当然だ。ところがその努力として中古電 車車両を使って来たあげく、もう中古電車を使うのはやめろということを言われたなら立 つ瀬があるまい。そこに国際商戦の勝利を目指す外交の暗躍がからんでくれば、事業経営 は政治家の顔色を見ながら行う仕事になってしまうかもしれない。 2013年2月19日にインカ社製の電車が乗客を運んだ。この電車は10年前に作られ たKRL-Iでなく2011年に製造されたもので、KfWと通称されるようになった最新型の電 車だ。ドイツの復興金融公庫Kreditanstalt f?r Wiederaufbauからの融資で開発された新 型電車であり、ドイツの技術を使うことが融資条件に付けられていたためにドイツの有力 な鉄道産業Bombardier Transportationからの技術支援を得て2セット作られた。 KAIコミュータジャボデタベッ社はこの電車2セットを電化工事がもうすぐ完成するスル ポン〜マジャ区間の運行頻度を増やすために使用する方針を立てた。型式承認試運転はド ゥリ〜タングラン線で行われて既にサティフィケートが与えられている。政府運輸省鉄道 総局はこの列車10セットをインカ社に発注した。この列車自体はまだ国鉄の資産になっ ておらず、国とインカ社の間での資産管理対象にされている。 2月19日から開始された試運転はスルポン〜タナアバン間を走るもので、スルポン〜マ ジャ区間のオープニングが行われてから運行区間が変更させることになっている。 ところが2014年9月にコミュータジャボデタベッ社はKfWに種々の不具合が見つかった ためにその運行をストップした。10セット40両のKfWが使えなくなったためにオペレー タは交代用の車両を総動員してその対策に当てた。首都圏では58列車が運行しており、 スペア列車がなくなったために1便でも走行不能になるとその便は運行取りやめにせざる を得ないと当局者は語っている。 2013年に日本から購入した205系電車2セットが型式承認プロセス中であり、20 14年に到着した2セットも型式承認プロセスの準備に入っているので、それらが承認さ れ次第、スペア列車として使えるようになるそうだ。 しかしインカ社は国鉄からの不良個所修理要求に対応したらしく、KfWは今でもインドネシ アの電車路線を走っている。[ 続く ]